学校へ行きしぶる子に効く「褒め言葉の公式」 不登校と自信の関係

福田遼,秋山仁志

子どもが「学校に行きたくない」と口にしたとき、親にできることは何でしょうか。つい原因を探ろうとあれこれ質問したくなってしまいますが、大切なのは子どもに自信をあたえるような声掛けなのだそうです。

ポットキャストの人気番組『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』のMC、福田遼さん、秋山仁志さんが解説する悩みの解決法を、お二人の著書より抜粋してご紹介します。

※本記事は福田遼,秋山仁志『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです

Q 息子が「学校へ行きたくない」と言っています

息子が「学校へ行きたくない」と言っています。
どうすればいいでしょうか?

A コンプリメントで自信の水を注ごう

「褒め言葉の公式」を活用しよう

ひとし:この方の詳しい状況はわからないけど、同じように「学校に行きたくない」と悩む子は多そうだね。

はるか:そうだね。このお悩みを見たとき、ちょっとどう回答するか迷いました。

ひとし:どういうこと?

はるか:教師って、不登校の子と触れ合う機会はあるんだけど、専門家ではないから。だから今回改めていろんな本を読んで勉強してきました。

ひとし:そっか。

はるか:こうした問題に対しては、たくさん考えるべきことがあるし、ケースによっても対応の仕方がいろいろあると思います。その中でも今回は、お子さんの心にアプローチする方法をお話ししたいと思います。これは不登校の子だけじゃなくて、なんらかの問題行動がある子にもかなり有効だと思うので、ぜひ知ってほしいです。

ひとし:じゃあさっそく教えてください!

はるか:うん。今回紹介するのは、スクールカウンセラーで長年不登校支援に力を入れている森田直樹さん(※1)が提唱されている「愛情と承認のコンプリメント(※2)」という方法です。コンプリメントはひと言で言えば「褒め言葉」です。

ひとし:子どもをいっぱい褒めようってことか。

はるか:そう。でも具体的に、なんて褒めたらいいのかってなかなか難しいと思うんです。とくに慣れていないと、親御さんもうまく言葉が見つからないかもしれない。そういうときに、この愛情と承認のコンプリメントの公式を覚えておくと便利なんです。

ひとし:公式! それはたしかに知りたいな。

はるか:まず、愛情のコンプリメントは「子どもの行動+うれしいな」です。I(アイ)メッセージ(主語が「私」の伝え方)に近いですね。たとえば、「〇〇くんがおいしそうにご飯食べている姿見るとうれしいな」とか「朝から〇〇くんの元気な姿が見られてうれしいよ」とか。

そして承認のコンプリメントは「子どもの行動+力があるね」です。具体的に「君にはこんな力があるね」と投げかけ続けて、子どもの力を承認していきます。たとえば「前に話したことを覚えてたね。〇〇くんには言われたことを身に付ける力があるんだね」とか。

※1 森田直樹:公立小学校教諭ののちに短大准教授を務める。現在はスクールカウンセラーとして活動。KIDSカウンセリング寺子屋代表として不登校支援を行う。

※2 愛情と承認のコンプリメント:森田氏は、親の力で再登校に導く支援法として、「コンプリメントトレーニング」と名付け、その方法を体系化している。参考文献『不登校は1日3分の働きかけで99%解決する』(森田直樹著、リーブル出版)

不登校の真の原因は「自信」がないこと

ひとし:たしかにそれ言われたらうれしいね。でもこれが不登校で悩んでる子に対して効果があるの?

はるか:うん、効果はめっちゃある! そもそも不登校の原因と言うと、「友だちにいじめられたのかな」「先生に嫌なことを言われたんじゃないか」と要因を特定しようと考えることが多いと思います。しかし、それはいくつもある要因の中の一つで、きっかけに過ぎないんだよね。森田さんは、不登校の真の原因は、そういったストレスを「乗り越える自信がないこと」と断言されています。

この愛情と承認のコンプリメントを続けていくと、「自分はいるだけでもいいんだ」という自己肯定感や、「自分にはこんなことができるんだ」という自己効力感が育まれます。

ひとし:なるほど。嫌なことがあったり落ち込むのは当たり前、だからそれを乗り越える力をつけていこうって感じなのかな。

はるか:そうそうそう! 森田さんは、1日3分コンプリメントを行うと不登校が解決すると言ってるんです。

ひとし:それはすごい! とはいえ、3分って結構長いかも……? そんなにたくさん褒めるポイントを見つけられるかな、ってちょっと思った。

はるか:うんうん、とくにやり始めたばかりだとなかなか難しいと感じる方もいるかもしれません。そういう方におすすめなのが、布石を打っておくこと。

ひとし:布石?

はるか:お子さんに何かお願い事をしておくんです。たとえば、「明日洗濯物を取り込んでおいてくれる?」とか、「ちょっとこの野菜切っておいてくれない?」とか。そうやって布石を打っておくと、「〇〇ちゃんがお手伝いしてくれてうれしい」「〇〇ちゃんは人のために動ける力があるんだね」といった言葉をかけやすくなります。

ひとし:たしかに、それなら必ずコンプリメントする機会が生まれるね。

自信を注ぎ続ければ、子どもは絶対に変わる!

はるか:そうそう。だけど、これまでそういう会話をしてこなかった親子関係だったら、コンプリメントの言葉を投げかけ始めても、最初は子どもは素直に受け取ってくれません。「何それ、気持ち悪い」とかって言われることもあるみたいです。そういう態度が続くと、「いくらやっても変わらない……」と心が折れそうになるかもしれない。でも、絶対にそこでやめないでください。続けていれば、絶対に変わりますから。

ひとし:絶対、なんだね。

はるか:うん、これは自信を持って言える。森田さんは「コンプリメントは子どもの心のコップに、自信という水を注ぐことだ」とたとえられています。1回コンプリメントをすると、ちょっとだけ水がたまる。それをずっと継続して、いつかコップが満タンになったときに、ようやく子どもが変わるんだよね。

ひとし:それってだいたいどれくらいの時間がかかるものなの?

はるか:僕の経験では、1週間でパッと変わってくれた子もいたし、1年かけて最後にやっと変わってくれた子もいた。それだけ個人差があるのは、コップの大きさや、これまでどれくらい水がたまっているかは、子どもによって全然違うからだと思います。

とにかく、大事なのは「コップが満タンになったら絶対に変わる!」と信じて、コンプリメントの水を注ぎ続けること。目に見えて変化がなくても、コンプリメントを受け取るごとに、絶対に子どもの中には喜びや自信がたまっていますから。

ひとし:でも、絶対たまっていくって言い切って大丈夫? たとえば、コップに穴が空いてたりしたら、いくらやっても満タンにはならないよね。

はるか:あ、良い指摘! ありがとう。その通りで、たとえば友だちから自信を削がれるようなことを言われるとか、コップに穴が空いた状態の子もいます。そんなときどうするか。ここからは持論なんだけど、それは、「穴を塞ぐ」か「出ていく以上に注ぐか」の2択です。

ひとし:なるほど。穴を塞ぐっていうのは、そのお友だちから離れるとか?

はるか:そうそう。でも、どうすることもできない場合もあるから、そのときは穴から出ていくより多いコンプリメントを注ぎ続けるのが大事になると思います。

ひとし:そこは力業なんだね(笑)。

はるか:そう! だけど、いっぱい注いでたら、だんだんちっちゃな水漏れなんて気にならなくなっていくこともよくあるから。

ひとし:なるほどね。実は自分の中では不登校ってかなり少数派なイメージがあったんだけど、社会人になってから、会社に来られなくなったり、ストレスで適応障害になったりする人って結構多いなと感じるんだよね。だから、今回の話は大人にとってもすごくタメになる話だったと思う。

はるか:うんうん。大人同士の関係でも、この愛情と承認のコンプリメントができたらすごくいいんじゃないかなと思います。

はるか先生のワンポイント

コンプリメント(褒め言葉)の声かけを、注ぎ続けよう。

愛情のコンプリメント
─子どもの行動+うれしいな
「勉強してくれて、お母さん(お父さん)うれしいな」

承認のコンプリメント
─子どもの行動+力があるね
「言われたことを身に付ける力があるね」

先生、どうする!? 子どものお悩み110 番

先生、どうする!?子どものお悩み110番』(福田遼,秋山仁志/PHP研究所)
「JAPAN PTODCAST AWARDS」大賞・教養部門、2冠!
大人気ポッドキャスト「子育てのラジオ『Teacher Teacher』」、初の書籍化!
子どもにガミガミ怒ってばっかりの自分に、ドンヨリ。 うちの子の将来、このままでだいじょうぶかな、と不安になる……。そんなモヤモヤとした気持ちを抱えるすべての親御さんに届けたいーー。
元小学校教師のはるか氏と、友人でラジオ番組プロデューサーのひとし氏の二人が、子育てに悩める親御さんの気持ちに寄り添い、「明日やってみよう」と思える、22の「神回答」をお届けします。